インプラント 料金の今年の目玉は?

インプラント 料金の今年の目玉は?

遺影の中のほほえんだお顔は、私に語ってくださったその言葉を、もう一度ささやいていたような気がします。 抗がん剤治療などの効果が薄れ、WHOでいうところの「斜め線」の緩和ケア(五頁参照)の関わりの比重が、がん治療に比べて相対的に大きくなると、患者さんや家族と緩和ケア科の医師との話し合いは、それまでにも増して長く時間をとって行われるようになります。
患者さんの病状の見通しについて、がん治療の主治医から「あと○か月」という具体的な数字まで患者さんやご家族が伝えられている場合、患者さんや家族の気持ちの動揺を、どうやって前向きな状態へと立て直すか、緩和ケア科の医師にとって、もっとも難しい局面です。 長く患者さんと共にがんと闘ってきて、心身ともに大変な思いをされてきたご家族の、この段階での気持ちをうかがう機会が、しばしばありました。
ご家族の看病の形はさまざまでしたが、二四時間看護体制の病棟ではあっても、つねに患者さんに寄り添っていたい、そして実際付き添っているご家族は本当に多く、こうしたご家族の想いに圧倒されることがしばしばありました。 たとえば、ナースステーションに連絡したり物をとりにいったりする、院内の売店で日用品を買う、お昼や夜のお弁当を買う、病棟に設置された洗濯機で洗濯する、こうした必要最小限のことをするとき以外、家族は病室でベッドの横に座っているのです。
患者さん本人が睡眠中のときも、病室に入ったままのご家族もいました。 「だって、目が覚めたとき、いてあげたいでしょ?」ご家族も自宅と病院との行き来もあり、体力的にも疲れているはずですが、気持ちが患者さん第一になっているので、苦にならないというのです。
患者さんと共に精神の張りつめた日々を過ごしてきたご家族。 多くの場合、患者さん本人より先に、医師からがん治療の効果と患者さんの体調の変化について、説明を受けることになります。
そして、望みをかけてきたがん治療の中断、という事実を先に聞かされて打撃を受けるのは、ご家族なのです。 治療の効果に望みをかけてきたのは、ご家族も同じ。
その効果がいま期待できない、次のがん治療の当面の戦略がたてられない。 自分自身が「絶体絶命だ」「がんに負けた。
敗北だ」と追い込まれた気持ちになっていくのを抑えつつ、これからは患者さんをどう支えていけばいいのか、大きな不安のなかで、ご家族は医師に必死で救いを求めていました。 「余命という言葉はとても不確実」こうした家族の言葉を、緩和ケア科の医師はどう受け止めて、どう対応するのか。

「残念ですが、もうどうしようもありません」「仕方がありません」「もうやるべきことは全部やりました」「あと○か月、って言われたんです。 それなのに、抗がん剤は効いているからまだ続けたいって。
でも、もう口も荒れて何も食べられないし、身体も起こせない。 とても、そばにいて耐えられない。
何とか本人にもう治療をやめよう、って言ってほしい」「本人はまだ治療したいって言うんです。 治療がもう無理といったら、そのとたんに生きる気持ちを失ってしまうんではないかと心配なんです。
だから、嘘でもいいから治療がんばろう、って声をかけているんです」「もし、もうがんの勢いを止められないなら、本当のことを本人に伝えることはできません。 もう治療をやめて家につれて戻りたいのですが、そこをうまく本人に伝えてほしい。
でも治療ができない、とは言わないでほしい。 そんな辛い現実をいま、本人の耳に入れたくない」そして「がん治療がもうない、ということを家族として認めたくないし、患者本人にも伝えられない」ということについては、WHOの「斜め線」の考え方を、とくに強調し、何とかがん医療のあり方をわかってもらおうとしたのです。
「がんの医療には二つあって、がん自体を攻撃する治療と、がんに伴う苦痛を取り除く治療、つまり緩和ケアがあるんです。 いまは、苦痛が強くなってきたので、まずは緩和ケアに専念し、もはや、この時点では家族が楽観したりしないように、家族にそう伝えるのでしょうか。

あるご家族の要望でM医師との面談が持たれた際に、同席する機会がありました。 私は緊張して、その局面のM医師の答えを聞いていました。
M医師は、「余命○か月といわれた」という不安に対して、こう答えました。 「余命という言葉はとても不確実なもので、短く告げられた方がその後も長く生活されることもあるし、一方で、元気な人が突然、発作や事故で亡くなることもある。
私自身にも、その可能性は否定できない。 だから、まず、その数字に縛られて前向きな気持ちを失う必要はないんです」「これからやれることはあまりありませんが、よい最期となるようにいっしょに頑張りましょう」あわてないで、そのときできることをこうした方針を示された患者さんやご家族は、徐々にその「あわてないで、そのときできることに専念する」という考え方に変わっていき、また新しい希望を持つようになっていきます。
最初は、患者さんやご家族が特別に乗り越える気持ちを持っている人たちだったから可能なのだ、と思っていましたが、繰り返しその様子を取材するうちに、これが「再発・進行がんと向き合う王道」ではないか、私自身、そういう考えを持つようになりました。 その苦痛を取り除くことが第一・その苦痛がとれてから、また、がんの治療の可能性を探ることが大切です。
がん治療によって体力が衰えたり、体調が悪くなっているのであれば、治療をまずいったん停止しましょう。 そして、緩和ケアで苦痛を取り除くだけでも病気と向き合うことができます。
あわてないで次のことを考えましょう。 そして、たとえば、腹水がたまってだるさが増している方には、腹水をとるシャント技術の提供を、むくみの増している方にはマッサージを、歩きたい方にはリハビリテーションを、と、それぞれの患者さんの、そのときどきに合った、新しい可能性に向けての具体的な方針を示すのでした。
がん治療そのものが、患者さんの体力の消耗と引き替えになって継続されていることもしばしばあります。 患者さんやご家族が「治療しなかった方がよかったのかもしれない」「選択を誤ったのではないか」という後悔の念に駆られている場合もあります。

その治療を選択したのは、治療への希望を持ち、効果に期待していたからですし、その治療が継続されていたということは、一定期間、その効果があったことも意味しているわけですが、それでも患者さんの辛い状況を前にして、ご家族は自分たちの選択が正しかったのかどうか、不安になるのです。 医師の中には、そうした患者さんやご家族の思いに想像が及ばず、「もっと早く治療をやめるべきでしたね。
無意味でしたね」といった残酷な意見を述べる例もあるそうです。 まさに、このようなシチュエーションで、M医師は、「患者さんは、よく頑張られました。
一定の効果があったのですから、よかったと思います。 今は体力を取り戻すためにも、とにかくいったん治療を停止して、次のことを考えましょう」と声をかけていました。
後日、ご家族は、その言葉に心から感謝していました。 「焦らないで、緩和ケアに専念する」。
もちろん、葛藤や、悲しみ、苦痛に包まれている患者さんやご家族が、そう簡単に実践できることではありません。

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